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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/08/01 12:06, 提供元: フィスコ ジェイ・エス・ビー Research Memo(6):業務改革と組織改革による「両利きの経営」で目標達成目指す(2)*12:06JST ジェイ・エス・ビー Research Memo(6):業務改革と組織改革による「両利きの経営」で目標達成目指す(2)■ジェイ・エス・ビー<3480>の中長期の成長戦略 3. 事業戦略 (1) 不動産賃貸管理事業 不動産賃貸管理事業の事業戦略では、業務改革と組織改革を最重要課題としている。そして、人間性とテクノロジーの融合、環境配慮型学生マンションの展開、リノベーション事業の確立、海外市場調査、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の組成を推進する。学生マンション事業における同社の強みである「企画・開発・提案力」「募集力」「サービス・管理力」の「三位一体」による一気通貫サポート体制を生かし、企画開発・賃貸・メンテナンス及び食事をはじめとする入居中サービスのそれぞれにおいて顧客基盤の拡大やサービス拡充を図る。そして入居者やオーナーをはじめとした社外各方面との関係性強化を通じ、持続的成長の実現を目指す。 事業戦略目標の実現に向けて、企画・賃貸・メンテナンスの一連の業務において、次のような施策を推進している。 まず、企画部門では、食事付き学生マンションの積極的展開を計画する。都心エリアでは、2025年2月完成の「学生会館テラスカレッジ文京護国寺」は、朝夕2食付きの学生会館で、有人管理、エレベーターセキュリティ付きで安心、四季折々の植栽と広々としたラウンジで快適な住環境などの特色がある。また、地方エリアでは、2025年2月完成の「学生会館 J.リヴェール高松駅西」は、食事付き学生会館で、オートロック・防犯カメラ・光ネット無料(Wi-Fi対応)・浴室乾燥機など安心・快適設備が充実、全室家具家電付きで引越しラクラクなどの特色があり、徳島文理大学から徒歩6分、香川大学から徒歩14分、高松大学からスクールバス25分の好立地である。JR四国が事業主となり同社が運営する学生寮であり、地域の活性化にも資するものである。 賃貸部門では、契約事務センターの試験運用、お客様サポートセンターによる手続き対応、電子契約促進などに取り組む。契約事務センターの試験運用では、契約書類を各店舗・支社から個別に発送していた従来の方式から、一部エリアでは契約事務センターから発送することで各店舗がコア業務に専念できる環境を整える。お客様サポートセンターによる手続き対応では、契約に際して必要な重要事項説明を、お客様サポートセンターにおいて一括で担うことで、労務環境を改善し、事務ミスをなくし、サービス品質の均一化・向上を目指す。更新契約の電子契約促進では、満期対象者の電子契約率を2024年3月期の約13%から2025年3月には約36%に拡大しており、コスト削減、業務効率化、サービス品質向上を実現している。 メンテナンス部門では、アプリの展開、デジタルサイネージの設置、営業・現場対応の分業化、節水やゴミ削減などに取り組む。アプリ導入では、2024年4月より入居者向けに利便性の高い住まいサポートアプリ「totono」を導入している。アプリはトラブル対応などに使われ、利用者数は2025年春時点で37,000人超に達している。デジタルサイネージは、エントランスや食堂に設置するディスプレイで、遠隔でリアルタイムに表示を切り替えることが可能で、食堂メニューや管理会社からのお知らせなどを表示する。デジタルサイネージではペーパレス化の推進により、最新情報を早期に知らせることが可能で、アプリと同様に同社グループの業務負担を減らすことにつながる。設置スペースのある学生マンションを中心に、設置件数を増やす計画で、新たな広告事業への展開も検討している。 (2) 新規事業 新規事業の戦略目標としては、若者成長支援サービス事業モデルの確立、全国へのHR(人材)サービスの提供開始、新ブランド創出によるビジネスサイクルの補完(現在の幼児教室だけでなく、対象を小・中学生から大学卒業後まで拡大する)などを掲げる。 具体的には、日本社会の重要インフラとしての「新価値創造 学生マンション」を目指して、UniLifeのブランド認知度拡大及びブランドイメージ向上を目指す。幼少期から大学生まで、本人や親に向けた事業展開によって、基幹ブランドのUniLifeをより早く、より近くに感じられる施策を展開する。また、UniLifeでしか提供できない顧客体験価値(CX)の提供を図る。多くの体験や学びの場など、他とは一線を画す独自ソフトの提供を目指す。このほかにも社会的価値が高い人材の育成を図る。社会を一変させるような出来事に相対しても、新しい社会において活躍できる本質的人間力を持った人材、高度IT社会においても第一線で活躍できる人材の育成を目指す。こうした新規事業分野における各取り組みと、主力の学生マンションや入居者とのつながりによって、同社グループ全体としてのシナジーを追求する計画だ。 同社グループが目指す姿は、経営理念にある「健全な若者の育成と魅力溢れる社会の実現」であり、“住居”の枠組みを超えた新たな価値を創造することである。すなわち、従来は安心・安全・快適の学生マンション、学生に寄り添ったサービスの提供にとどまっていたが、今後はソフト面での充実を図り、UniLifeでしかできない学びを提供することで他社との差別化を図る計画である。 新価値創造の取り組み事例では、島根県雲南市「まちまるごとインターンシップ」との連携により、ほかでは経験できない学生への機会を提供し、学生ならではの視点で地域の抱える課題について検討した。また、福岡市協力「福岡城清掃イベント/歴史に触れながらの仲間づくり」を開催し、学生が新たな環境で仲間を作るためのサポートに加えて、実際に体験することで地域社会の理解を促した。こうした取り組みは他社との差別化になり、賃料上乗せにつながる可能性もある。 以上のように、同社グループでは中期経営計画「GT02」に意欲的に取り組んでいる。同社グループの経営環境は、長期的には今後も成長機会に恵まれ、成長戦略に対する少子高齢化進展の影響も限定的であると考えられる。学生マンション市場については、4年制大学のうち特に女子学生の増加が顕著であること、国の政策サポートにより留学生も増加を続ける見通しであることなどから学生マンションの供給は不足しており、一般マンションでは提供できない「安心感」「サービス」という強みが世の中に浸透するに伴って、同市場は今後も拡大傾向を続けると予想される。 また同社グループは、学生マンション業界のパイオニアとして高い知名度や信頼を築いている。今後も学生マンション供給不足が続くと予想されるなか、成長余地は大きいと言えるだろう。弊社では、今後の事業環境変化を見据えた中期経営計画の推進により、同社グループのさらなる成長が可能であると考えており、引き続き中期経営計画の進捗状況に注目したい。 4. ESGへの取り組み 同社では、「豊かな生活空間の創造」を経営理念として掲げており、ESGにも積極的に取り組んでいる。環境(Environment)では、リユース文化醸成・環境問題への取り組みを行い、循環フェスを開催して不要になった古着の回収・再利用に取り組んでいる。また、環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営するCDPへの気候変動質問書に対する回答書を提出し、「マネジメントレベル」(自社の環境リスクや影響について把握し、行動している)とされる「B-」のスコアを取得した。社会(Social)では、学生支援・地域支援への取り組みとして、キャリア教育プログラム「お仕事図鑑」へ参画し、また第8回「学生下宿年鑑2025表紙デザインコンペ」の開催をしている。ガバナンス(Governance)では、経費不正処理問題について詳細な再発防止策を策定・発表しており、再発防止の徹底により株主及び投資家をはじめ、すべてのステークホルダーからの信頼回復に努める考えだ。このように、同社グループは業績拡大を目指すだけでなく、ESGにも積極的に取り組んでいると弊社では評価する。欧州投資家を中心に世界的に企業のESGへの取り組みを考慮した投資が拡大しており、わが国でも近年はESG投資が急拡大していることから、引き続き同社の取り組みが注目される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希) 《HN》 記事一覧 |