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フィスコ投資ニュース配信日時: 2025/07/14 15:03, 提供元: フィスコ アイカ工 Research Memo(3):化成品と建装建材の2本柱。建装建材が営業利益の約7割を占める(2)*15:03JST アイカ工 Research Memo(3):化成品と建装建材の2本柱。建装建材が営業利益の約7割を占める(2)■アイカ工業<4206>の事業概要 海外市場でのマーケティング戦略としては、経済成長が著しいアジア各国に幅広く製造・販売拠点を有し、それぞれの地域・顧客の需要に応じた製品を提供するなど改良開発に力を入れている。また、基本的には地産地消のビジネスモデルであり、消費地の近くで大規模プラントにより自動生産できる戦略も差別化につながっている。日本で培った接着剤技術や素材開発力も併せて投入することで競合他社との差別化を図り、現地顧客の信頼を獲得している。 また、AAPグループの前身である接着剤メーカー・ダイネア社のブランド力を効果的に引き継いだ点が最大の強みとなっている。海外進出においては、品質が良くとも顧客からの顧客支持を得るには年月を要するが、現地に根付いたブランド力と生産拠点・生産体制を引き継ぐことで、アジア地域での業容拡大を加速化してきた経緯がある。 同社は、2010年代以降、数多くのM&Aを遂行し、国内の化学・建材メーカーからグローバル企業へと大きく変容を果たしている。M&Aでは、慎重なデューデリジェンスや迅速な意思決定、統合後の対応など、複合的な事業運営力が求められる。同社はこれまで多くのM&Aを手掛けてきた実績と経験を有しており、これが競合に対する大きな優位性となっている。今後も、他事業を含めたさらなる拡大に向けて、この経験が重要な基盤になると考える。 一方で、海外事業においては国ごとに世界経済の影響を受けやすい点には一応留意したい。中国については現段階で健闘しているものの、弱含みの景況感を踏まえると今後は念のため注視したい。また、東南アジアの市場においても中国の安価な製品が流入してきており、タイを中心に価格競争が発生している。現段階では、同社の売上高と収益性に対する中国ビジネスの影響は限定的であるが、さらなる景況感の悪化は経営上のダウンサイドにつながり得る。 外部環境の先行きが不透明ななかでも、同社は高付加価値商品を投入して地場企業との価格競争を回避し、成長余地の大きいアジア市場の需要を着実に取り込む戦略を継続している。 3. 建装建材セグメント (1) 国内 メラミン化粧板が代表的な製品であり、国内シェア1位となっている。1960年にメラミン化粧板を発売して以降、化成品セグメントで培った化学技術を生かし、機能性・意匠性で差別化を図った製品展開や強固な販売ネットワーク(アイカ会)の構築などにより、国内シェア首位を維持している。同製品は耐久性に優れ、テーブルや家具の表面材として用いられる建築素材であり、豊富な色柄バリエーションにより、オフィスや商業施設・病院・ホテルなど様々な空間で利用されている。 次に、メラミン不燃化粧板「セラール」など壁面用の不燃材も代表的な製品であり、90年代後半に住宅キッチンパネル用途で販売を拡大し、国内シェア1位となっている。「セラール」は不燃材という特徴に加え、堅牢性・意匠性・抗菌性などにも優れ、現在では病院や学校・駅舎など非住宅分野でも使用される素材となっている。 近年の注力分野は、住器建材における「スマートサニタリー」が該当する。「スマートサニタリー」は、造作のような自由度・意匠性と機能性、相対的に安価な価格帯でSNSなどでも人気が拡大している造作風洗面化粧台である。洗面ボウルやカウンター・収納棚などのデザインやサイズを自由に組み合わせられる点が特徴となっている。 このように建装建材国内では、メラミン化粧板を核に多彩な建築内装材・住宅設備材をラインナップし、住宅から商業施設・オフィス・医療福祉施設・学校・宿泊施設・公共交通機関に至る様々な空間を彩る製品を供給している。 足元の業況を見ると、国内の建装建材事業は高付加価値商品へのシフトと市場変化への適応によって順調に右肩上がりの成長を遂げている。なかでも「スマートサニタリー」は独自の意匠性と施工性で高評価を得ており、収益をけん引するヒット製品となっている。このような高付加価値路線への転換と新製品投入により、建装建材国内は同社の収益獲得をけん引する稼ぎ頭となっている。 同事業の強みとしては、化成品セグメントの接着剤や技術・製造シナジーを活用している点がある。加えて、国内シェアトップ企業としての豊富な知見・実績・多様な製品ラインナップが挙げられる。メラミン化粧板などで培ったノウハウを活用し、需要動向に応じて新商品を柔軟に開発・投入している。 具体的には、家具・什器用のメラミン化粧板技術を応用し、壁面用メラミン不燃化粧板「セラール」を開発している。また、「セラールONタイル工法」をはじめ工期短縮・省施工の工法・商品開発にも注力している。新築着工件数が弱含むなか、リフォーム需要の拡大という市場の変化を捉え、市場ニーズに即した商品開発を行っていると言えよう。 さらに、機能性と意匠性を両立した製品開発力も卓越しており、耐久性・難燃性・抗菌性など機能面で優れた建材と多彩なデザインバリエーションを兼ね備えた製品群は、競合他社にはない付加価値を提供していると考える。 今後も、同社は国内市場の構造変化(新築需要の減少やリフォーム需要の増加等)を捉えながら、高付加価値戦略と製品ポートフォリオの見直しを継続することで、同社収益の中核を担うことが期待されている。また、新たな用途展開として、床材や天井材への応用にも進出しており、まだ全体に占める割合は大きくないものの、徐々に実績が拡大しており、中長期的には飛躍的に成長していくことも期待されている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 三浦 健太郎) 《HN》 記事一覧 |